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Sayahon
更新日2023年1月21日スペイン語の普及と需要が加速するアメリカ
近年、アメリカで増加し続けているスペイン語話者。
ジャスティン・ビーバーとのコラボでも話題となった『デスパシート』や『 タキ・タキ・ルンバ』を筆頭に、ここ数年スペイン語の音楽やTVシリーズが世間を賑わせています。
では、現在スペイン語はアメリカでどのくらい浸透しているのでしょうか。また、スペイン語に着目するメリットとは?
今回は、英語・スペイン語話者で、これまでに15回以上アメリカ各地に滞在してきた私Sayah (@sayah_media) が、
- スペイン語の需要と将来性
- アメリカ国内でのスペイン語の普及度
- 今後スペイン語が世界に与えるインパクト
- なぜ今スペイン語市場が注目されているのか
などについて解説します。
スペイン語学習者からスペイン語圏でのビジネスを考えている方まで、ぜひこの記事を役立てていただければ幸いです。
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アメリカで需要が高まるスペイン語
日本人にとってはあまり馴染みのないスペイン語。
しかし、アメリカでは、スペイン語が第二公用語のような立ち位置になっているだけではなく、近年急速にその勢いを増しています。
語学学習サービスを提供するロゼッタストーン社が「今後50年間で需要が高くなると思う外国語」について、日米男女にアンケート(1)を行なったところ、日本では以下の結果になりました。
- 1位:中国語(77.2%)
- 2位:英語(67.6%)
- 3位:韓国語(16.0%)
- 4位:スペイン語(7.0%)
- 5位:ヒンディー語(6.7%)
- 6位「ロシア語(4.7%)
一方で、アメリカで1位に選ばれているのはスペイン語(67%)です。
2位以降も、
- 2位:英語(40%)
- 3位:中国語(34%)
- 4位:アラビア語(13%)
- 5位:日本語(12%)
- 6位:フランス語(8%)
など、日本とまったく異なる結果を示しています。
アメリカでのスペイン語の需要の高さについて、同社は「ヒスパニック系人口の増加が影響しているのではないか」と推測。「ヒスパニック系」の定義については、下で詳しく解説します。
ヒスパニック系アメリカ人の有名人についても、こちらの記事で解説中です。
ヒスパニックとは
ヒスパニック系アメリカ人またはラテン系アメリカ人(ラティーノ)とは、一般的にアメリカ在住でスペイン語を母国語とする移民やその子孫のことです。一言で「スペイン語を話す移民」と定義されることもあります。
アメリカでは特にメキシコ、プエルトリコ、キューバなどのラテンアメリカ出身の人を意味しており、人種としては「マイノリティ」に括られるヒスパニックですが、その数は年々増加傾向にあります。
また、厳密に言うとヒスパニックとラティーノの定義は微妙に異なり、ヒスパニックにはスペイン系フィリピン人などの中南米以外の人たちも含まれるのが特徴です。
▼ヒスパニックの意味やラティーノとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
アメリカのスペイン語人口は世界2位
スペイン語話者の多さは、スペイン本国やラテンアメリカに限ったことではありません。
スペイン語の振興や教育、文化の普及を目的としているスペイン政府の公的機関 セルバンテス文化センターは、2015年にレポート (6) を公開し、アメリカのスペイン語人口はメキシコに次いで世界2位であることを明かしました。
これはアメリカのスペイン語話者数がスペイン本国よりも多いことを意味しています。
ちなみに、世界総人口のうちスペイン語圏の比率は6.7%で、続いて2位がロシア語(2.2%)、3位がフランス語(1.1%)とのことです。
(6) Source: El Español: Una Lengua Viva. Informe 2021 | Instituto Cervantes
スペイン語は世界で4番目に使用されている
国際SILが運営している「エスノローグ(Ethnologue)」が発表したデータ「 世界で最も話されている言語トップ10(2021年版)」(2)によると、現在スペイン語を話す人の数は世界中に5億4,300万人ほど存在しています。
これは、世界で話されている言語の中で上から4番目の多さです。
また、スペイン政府の公的機関 セルバンテス文化センターの2020年のデータ(3)によると、世界で母国語としてスペイン語を話すネイティブの数は、なんと1年間で600万人も増加。スペイン語を使用している非ネイティブの数も60%ほど上昇したそうです。
この数字を見ても、スペイン語が世界的に勢力を増していることが伺えます。
(2) Source: What are the top 200 most spoken languages? | Ethnologue
(3) Source: Spanish, a language spoken by 585 million people, and 489 million of them native | Blog del Instituto Cervantes de Londres
スペイン語はネット上で3番目に使われている
また、統計調査プラットフォームの「Statista」が公開しているデータ(4)によると、インターネット上で使用されている言語のうち、スペイン語は3番目に使用されている言語であることが明らかになっています(2020年1月時点)。
Source: Internet: most common languages online 2020 | Statista
つまり、日本語だけではなく英語とスペイン語ができる人は、オンライン上の3分の1以上のユーザーとのコミュニケーションや有益な情報交換が可能になります。
また、スペイン語を勉強・習得することは、海外企業とのコンタクトや海外での事業展開など、ビジネスにおいても大きなメリットをもたらすでしょう。
スペイン語のコンテンツ数は上位4位
また、2022年2月にWeb技術調査サービス「W3Techs」が公開したデータ(5)によると、インターネット上にあるコンテンツの中で、スペイン語のWebコンテンツ数は4番目に多いとのことです。
本データによれば、コンテンツ数が1番多いのは63.7%の英語で、2位がロシア語(6.8%)、3位がトルコ語(4.0%)、4位がスペイン語(3.6%)、5位がペルシャ語(3.5%)、6位がフランス語(2.5%)、7位がドイツ語(2.0%)、8位が日本語とベトナム語(1.9%)、10位が中国語(1.4%)となっています。
つまり日本語と英語とスペイン語が話せる場合、翻訳を待たずにインターネット上の約7割のコンテンツをいち早く手に入れることが可能です。
(5) Source: Usage statistics of content languages for websites | W3Techs – Web Technology Surveys
アメリカの総人口の17.4%がヒスパニック系
米調査機関「ピュー研究所(Pew Research Center)」(9)によると、スペイン語圏出身者やその子孫であるヒスパニック系アメリカ人の人口は、現在アメリカの総人口の17.4%を占めています。
2010年の国勢調査において、当時300万人ほどだったヒスパニック系アメリカ人の数は、2020年には2,000万人以上に至るなど、脅威のスピードで人口増加が加速し続けています。
また、2010年から2020年までの10年間で、アメリカの人口は2,270万人増加しており、増加人口の51%をヒスパニック系が占めているそうです。
Source: Facts about U.S. Latinos for Hispanic Heritage Month | Pew Research Center
出身国別にヒスパニック系アメリカ人を分別すると、1番多いのがメキシコ系(63%)で、2番目がプエルトリコ系(9.2%)、3番目がキューバ系(3.5%)、4番目がエルサルバドル系(3.3%)となっています。
一方で、メキシコ系を始めとするアメリカの移民問題は、度々ニュースでも取り上げられており、トランプ政権下ではメキシコ国境の壁建設などの移民政策が大変物議を醸しました。
また、過去にはアメリカの巨大なスペイン語コミュニティにアピールすべく、ブッシュ大統領やケリー候補があえてのスペイン語で演説を行ったことが、当時とても話題になりました。
このように、今や「アメリカを制するには、スペイン語コミュニティの攻略が必要不可欠」と言っても過言ではないほど、スペイン語コミュニティは国単位で影響力を及ぼしています。
▼オススメ記事:中南米のスペイン語が学べる人気オススメ映画とドラマはこちら。
ヒスパニック人口の多い州ランキング
それではアメリカでスペイン語人口が一番多いエリアは、一体どこなのでしょうか。
アメリカでヒスパニック系が最も多い州は、アメリカ西海岸のカリフォルニア州です。
ヒスパニック系は、もはやカリフォルニア州最大の人種または民族グループとなっており、州の人口のうち39%を占めています(2020年時点)。(9)
ちなみにカリフォルニアのPasadenaに本部を持つ私の大学でも、ヒスパニック系の学生が白人学生の次に多いようです。
数にすると、ロサンゼルスのヒスパニック系人口は400万人を超えており、これはロサンゼルス市住民の約半数にあたります。また、その多くは隣接するメキシコ系の人々です。
しかし、カリフォルニア以外にも、アメリカにはスペイン語が使われているエリアがたくさんあります。
人数で比較した場合、次にヒスパニック人口が多いのはテキサスです。テキサス州内には1,140万人(人口の39%)が暮らしています。
3番目に多いのは、570万人(人口の26%)のヒスパニック系が住んでいるフロリダです。(9)
3大スペイン語圏のテキサス、カリフォルニア、フロリダでは、2010年から2020年までの10年間で、ヒスパニック人口が100万人以上増加しています。この数字は、この3エリアだけでヒスパニック人口増加分の43%にあたる計算です。
また、2010年以降、アメリカ全50州とコロンビア特別区において、スペイン語人口は年々増加傾向にあります。(9)
ヒスパニック系の割合の多い州ランキング
ここでは、人数ではなく各州の総人口に対するスペイン語人口の割合で比較します。
以下は、アメリカ合衆国国勢調査が発表した「2020年版:州別のヒスパニックまたはラティーノ(ラテン系アメリカ人)の割合」(10)です。
Source: Race and Ethnicity in the United States: 2010 Census and 2020 Census | United States Census Bureau
これによると、ニューメキシコには人口の約48%にあたる100万人のヒスパニック系が住んでおり、アメリカ全土で最も高いシェアを占めています。
ヒスパニック率が2番目に高い州はカリフォルニア州で、3番目がテキサス州、4番目がアリゾナ州、5番目がネバダ州となっています。
人数で3位だったフロリダは、割合で見ると上から6番目です。
スペイン語話者の割合が多い都市ランキング
上の章では、アメリカ在住のヒスパニック系の人数や割合について解説しました。ここでは「ヒスパニック」という括りではなく、「スペイン語話者」の単位でデータを見ていきます。
以下はスペイン語話者が多い都市を、割合が高い順にまとめたものです。(11)
(※単位=1,000)
Source: List of United States cities by Spanish-speaking population | Wikipediaをもとに、筆者作成
アメリカでスペイン語話者の割合が最も多いのは、フロリダ州マイアミで、スペイン語話者の割合は70.20%です。つまり、マイアミでは少なくとも3人に2人はスペイン語話者ということになります。
そのため、場合によっては「英語よりもスペイン語の方が通じる」ということも起こり得るでしょう。
また、上位10位の中にテキサス州の都市が5つランクインしているのもポイントです。
ニューヨーク市においては、割合ではトップ10圏外(12位)でしたが、スペイン語話者の数で比較した場合、全米1位の多さとなっています。
これは2位のロサンゼルス(約154万人)を約30万人も上回る数字です。(11)
ヒスパニック系人口は東海岸でも急増
上でもニューヨークのスペイン語話者数の例を挙げた通り、スペイン語話者の多いエリアはアメリカ西海岸やアメリカ南部だけではありません。
ヒスパニック系アメリカ人の数において、テキサス、カリフォルニア、フロリダの次に多い州は、アメリカ東海岸の主要都市、ニューヨーク州(531万人)とニュージャージー州(447万人)です。
2010年からの10年間で、ニューヨークではヒスパニック系アメリカ人の人口が50万人以上増加しています。(9)
以下に、私がよく滞在しているニューヨークのHarlem(ハーレム)の写真をいくつか掲載します。
NYにはこれまでに6回ほど滞在しているのですが、中でもHarlemは東側と西側、中央と、場所によって非常に違った雰囲気を持つエリアです。
エリアの位置付けは幾度も変わっていますが、私がよく住んでいたのは「Central Harlem(セントラル・ハーレム)」と呼ばれるエリアになります。
メインストリートの125丁目(125th street)沿いには、ブラックミュージックの殿堂との呼び声高いアポロ・シアター(Apollo Theater)があるなど、元々Harlemは長い歴史を持つ黒人街です。
東側のEast Harlem(イースト・ハーレム)は、通称「Spanish Harlem(スパニッシュ・ハーレム)」とも呼ばれており、プエルトリコ人をはじめ、スペイン語圏の人々が暮らしています。
数年前にEast Harlemにも滞在していたことがあるのですが、このエリアは名前や看板がスペイン語で書かれているお店が多いのが特徴です。
上の写真(Central Harlem)と下の写真(East Harlem)を比べると、同じHarlemでも雰囲気がガラッと変わっているのがお分かりいただけるでしょうか。
East Harlemには、メキシコ料理のレストランやヒスパニック系のスーパー、ヒスパニック系のデリ(個人経営の小さなコンビニ的な食料品屋)などがいっぱいあり、ブラックカルチャーの歴史が色濃く残るCentral HarlemやWest Harlemとは雰囲気が異なります。
一瞬、自分がアメリカではなく中南米にでもいるのではないかと思ってしまうほどです。
例えば、落とし物を拾ってあげると、英語の代わりにスペイン語で「Gracias」という言葉が返ってくることもしばしば。
また、上の画像のように、East Harlemでは定期的にヒスパニック系のパレードが開催されています。
このように、アメリカでは西海岸や南部だけではなく東海岸においても、スペイン語コミュニティの巨大さや影響力を感じることが可能です。
今後アメリカは世界1のスペイン語市場に
さらに、DELEスペイン語検定やSIELEを運営しているセルバンテス文化センター (6)は、アメリカのスペイン語人口は2050年までに1億3,280万人に到達し、全人口の3〜4人に1人がスペイン語を話すと予想しています。
これは2050年までにアメリカが世界で1番スペイン語話者数が多い国になることを意味しています。
また、2021年8月に米商務省国勢調査局が発表した「国勢調査」(12)によると、2010年からの10年間で白人人口が過去最低の8.6%減少したことが明らかになっています。しかも、白人人口が減少したのは史上初です(一方で、混血は276%増)。
他にも、カリフォルニアではヒスパニック系アメリカ人の割合が39.4%を突破し、これまで最多だった白人グループ(36.5%)を超えて、初の最大の人種グループとなりました。
ヒスパニック系アメリカ人は、テキサスでも39.3%という比率を叩きだしており、こちらも白人の39.7%を追い抜かす勢いです。
気になる今後のアメリカの人種構成に関してですが、人口動態のスペシャリストとして知られる米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」のウィリアム・フライ(William Frey)氏は、2045年に白人人口は49.7%まで減少し、アメリカは「白人少数派社会」に突入すると予想しています。(13)
Source: The US will become ‘minority white’ in 2045, Census projects | Brookings
以下の図は、2060年以降のアメリカの人種構成を表したものです。
2018年(グラフ左)と2060年(グラフ右)を比較すると、2060年に白人の割合は減少しているのに対し、2060年のヒスパニック系の割合は増加しています。
Source: The US will become ‘minority white’ in 2045, Census projects | Brookings
また、2060年の推計を年齢別に見ると、65歳以上の白人の割合が半分以上の55.1%を占めているにも関わらず、18歳未満の白人の割合は36%にしかすぎません。
一方で、2060年になると、ヒスパニック系アメリカ人の18歳未満は人口の32%を占めています。
2060年の高齢者の半数以上が白人であることを考えると、2024年から白人の高齢化が進展していく一方で、若者率が多いヒスパニック系アメリカ人は、今後アメリカの高齢社会の助長を防ぐうえで重要な要素となるでしょう。
また、選挙投票への参加や若い労働力としての活躍など、これからのアメリカ社会に貢献していくであろうことを考えると、今後アメリカのスペイン語コミュニティは、ますます勢いづいていくのではないでしょうか。
スペイン語は50州中43州で第2言語的ポジション
実はアメリカには国・連邦レベルでの公用語は定められていません。しかし、州単位ではアメリカ50州のうち30前後の州が英語を公用語としています。
また、中には英語以外の公用語が定められている州もあります。
英語以外の公用語が規定されている(または事実上の公用語である)州と言語は以下の通りです。
- スペイン語(ニューメキシコ州、プエルトリコ)
- フランス語(ルイジアナ州)
- ハワイ語(ハワイ州)
- チャモロ語(グアム、北マリアナ諸島)
- カロリン語(北マリアナ諸島)
- サモア語(アメリカ領サモア)
では、各州で英語以外に使用されている言語には一体どのようなものがあるのでしょうか。
以下は、グラハム・ホールディングス・カンパニー傘下の米ニュースメディア「Slate」がまとめた、アメリカの各州で英語の次によく使われている言語一覧 (14)です。
Source: Language map: What’s the most popular language in your state? | Slate
これを見ると、スペイン語はアメリカのほぼすべての州で第2言語的ポジションとなっていることが分かります。
英語の次にスペイン語が使われている州は全50州中の43州で、他にフランス語(4州:メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、ルイジアナ州)、ドイツ語(1州:ノースダコタ州)、タガログ語(1州:ハワイ州)、ユピック語(1州:アラスカ州)が使われているようです。
下の画像は、英語とスペイン語以外にアメリカ各地で使用されている言語を図にしたものです。こちらも非常に興味深いため以下に掲載しておきます。
Source: Language map: What’s the most popular language in your state? | Slate
こう見ると、意外にもアメリカでは中国語が浸透していないことが分かります。英語やスペイン語の次に中国語が使用されている州は、北米最大規模のチャイナタウンがあるニューヨークのみのようです。
スペイン語はアメリカで最も学ばれている
外国語学習支援サイト「MosaLingua」(15)によると、スペイン語は「世界で最も学ばれている言語」3位にランクインしています。
また、スペイン語はアメリカで最も学ばれている言語です。実際に幼稚園の年長から高等学校卒業までの教育期間において、米国学生の70%以上がスペイン語を学んでいます。
さらに、米国現代語学文学協会(MLA、Modern Language Association)(16)によると、アメリカの大学では学生の50%がスペイン語を選択しているそうです。
つまり、アメリカにおいてスペイン語は第2言語としての需要が高いと言えるでしょう。
(15) Source: What are the Most Studied Languages in the World? | Mosa Lingua
(16) Source: Enrollments in Languages Other Than English in United States Institutions of Higher Education, Summer 2016 and Fall 2016: Preliminary Report | Modern Language Association of America
多くの企業がスペイン語市場を重要視
このようなスペイン語市場の規模拡大と成長ポテンシャルを受けて、今日では世界中の企業がスペイン語市場に力を入れています。
ここでは、アメリカ国内だけではなく、お隣のラテンアメリカ市場も含め、スペイン語市場の持つポテンシャルや企業の進出の例をいくつかご紹介します。
競争が激化しつつあるラテンアメリカ市場
近年、ラテンアメリカの経済成長への期待から、市場を牽引しているメキシコ、ブラジル、アルゼンチンに進出する企業が増加しています。
中国でもラテンアメリカ市場の獲得に注力しており、大規模な投資や低利融資、さまざまなプロジェクト支援などを行なっています。
中国は今やメキシコを除くラテンアメリカ市場において(特にアルゼンチン、ブラジル、ペルー、ウルグアイ、チリ)アメリカを超える最大の貿易相手国です。(17)
(17) Source: In Latin America, a Biden White House faces a rising China | Reuters
日系も米国もメキシコ市場を重要視
一方で、スペイン語圏を代表する市場の1つであるメキシコは、アメリカの2番目の貿易相手国です。また、自動車輸出においては約7割が米国向けであるとされています。
さらに、アメリカ国際貿易委員会(ITC)が2019年5月に公開した2019年第1四半期(1~3月)の通関ベースの貿易統計(18)では、中国、カナダを抜いてメキシコがアメリカの最大の貿易相手国となっています。
日本でも、2011年から自動車メーカー大手4社(トヨタ、日産、ホンダ、マツダ)が、立て続けにメキシコ市場に対し大量の生産投資を開始。製造拠点の設置や委託、本格進出、新工場の設立など、さまざまな事業を展開しています。(19)
以下の表は、2020年12月にJETRO(日本貿易振興機構)が公開した『海外進出日系企業実態調査(中南米編)』(20)です。
今後事業を拡大する理由として、企業が一番多く挙げたのは「現地市場での売上増加(83.7%)」でした。これにおいては全体の8割以上もの企業が手応えを感じているようです。
また、2位には「輸出拡大による売上増加(33.7%)」、3位には「成長性、潜在力の高さ(31.7%)」がランクインしています。
投資環境面でのメリットとしては、1位の「市場規模・成長性(69.1%)」と2位の「人件費の安さ(52.7%)」に、共に半数以上の票が集まっています。
さらに、2020年7月にはアメリカ・メキシコ・カナダ間にて、新NAFTA(北米自由貿易協定)とも呼ばれる「米国・メキシコ・カナダ協定(United States–Mexico–Canada Agreement、以下、USMCA)」が結ばれたことは、皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。
これを受けて、アメリカ国際貿易委員会 (21)は、アメリカとメキシコの貿易が約5%増えると予想しています。
このように今後のスペイン語市場は、アメリカ国内のみならずラテンアメリカにおいても、大幅な発展を遂げていくことが期待できるでしょう。
(18) Source: Trade Map – Trade statistics for international business development | International Trade Centre, ITC
(19) Source: アメリカ合衆国基礎データ|外務省
スペイン語のコンテンツの需要が40%増加
また、巨大なスペイン語マーケットの獲得に向けて、自社サービスをスペイン語に翻訳・ローカライズする企業も増加しています。
スペイン語圏最大のテレビ局「テレビサ(Televisa)」は、総GDP7兆ドル以上という巨大なスペイン語市場を制すべく、2021年4月にアメリカのスペイン語コンテンツ配信大手ユニビジョン・コミュニケーションズ(Univision Communications)と提携し、世界最大のスペイン語メディア会社を設立しました。(22)
翻訳サービス「論文翻訳ユレイタス」(23)によると、近年スペイン語の翻訳を重要視する米国企業は数知れず、実際にスペイン語翻訳サービスの需要は推定で40%も増加しているそうです。
このように、近年では多くの企業がスペイン語圏市場のポテンシャルを認識し、スペイン語版のWeb広告やWebサイトの作成やコンテンツの翻訳やローカライズを行うなど、スペイン語市場の先を見据えたマーケティング戦略に取り組んでいます。
(22) Source: メキシコと米国のメディア会社が世界最大のスペイン語メディアを設立へ |ビジネス短信 – JETRO(ジェトロ)
(23) Source: Importance of Spanish translation for US companies | ulatus
12億ドルにのぼるヒスパニック系の購買力
さらに、多くの企業がスペイン語圏という大規模なマーケットに焦点を定めている理由は他にもあります。
一般社団法人 ラテンアメリカ協会によると、旺盛な消費意欲を持つヒスパニック系アメリカ人たちの購買力は、なんと12億ドルにものぼるそうです。(24)
これはメキシコのGDP(国内総生産)と肩を並べる規模でもあることから、ヒスパニック市場のポテンシャルの高さが伺えます。
また、スペイン政府の公的機関 セルバンテス文化センター (6)によると、アメリカのヒスパニックコミュニティが持っている経済力は、このコミュニティを独立国だと例えると、スペインに次いで世界8位にもなる規模とのことです。
(24): ヒスパニックを考える | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
スペイン語はアメリカで1番求人が多い
また、スペイン語の需要の高さはこんなところにも現れ始めています。
米ファイナンス誌『Kiplinger』(25)は、ネイティブの数が多い23の言語を分析し、雇用市場において最も価値が高く、今後需要が見込める言語を10個選出しました。
下の表は、2014年にアメリカ国内に掲載された求人広告の件数を、求人の多い言語順にランク付けしたものです。
順位 | 言語 | 求人広告件数 |
1 | スペイン語 | 314,981件 |
2 | 中国語 | 21,770件 |
3 | フランス語 | 14,749件 |
4 | ポルトガル語 | 9,769件 |
5 | 日本語 | 9.069件 |
6 | ドイツ語 | 6,818件 |
7 | 韓国語 | 6,018件 |
8 | アラビア語 | 3,582件 |
9 | ロシア語 | 3,422件 |
10 | ヒンディー語 | 645件 |
Source:Best Languages to Learn to Get Ahead in Your Career | Kiplinger をもとに、筆者作成
これを見ると、アメリカ国内でのスペイン語の需要は群を抜いています。さらに、アメリカ以外の国も含めた場合、スペイン語の募集は合計331,490件もの掲載があったそうです。
それでは、アメリカでスペイン語を使って仕事や就職活動を行う場合、一体どのような領域が需要が高いのでしょうか。
これに関して、ジョージタウン大学教育労働力センター(CEW Georgetown Unive)の研究教授兼チーフエコノミストのニコール・スミス(Nicole Smith)博士は、ラテンアメリカから流れてくる移民の増加を見込んで、ヘルスケアや銀行、小売などのセクターが伸びる可能性があると推測しています。
また、同氏は医療サービス管理者や正看護師など、高度なスペイン語レベルが必要とされる職業も推奨しています。
アメリカの雇用は増え続ける見込み
さらに、アメリカ国際貿易委員会 (21)は、2020年に発足された貿易協定USMCAにより、特に10〜12年間の教育を受けた労働者と13〜15年間の教育を受けた労働者の間で、今後アメリカの雇用が増えるであろうと見積もっています。
同委員会では、すべての教育レベルの労働者においても、平均0.27%ほどの賃金の上昇が見られると推定しており、今後のラテンアメリカ市場がアメリカにもたらす影響について、非常にポジティブに評価しています。
スペイン語を学ぶビジネス上のメリット
スペイン語を習得し、仕事やビジネスに使うメリットはさまざまです。
中には「スペイン語はネイティブの数も多いから、リソースは足りてるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし「英語⇆スペイン語」ができる人は世界中にたくさんいるものの、「日本語⇆スペイン語」となるとまだまだ少ないのが実情です。
まず、スペイン語を使う仕事やビジネスは、英語を使う仕事やビジネスよりも競争率が低いというメリットがあります。
次に、スペイン語圏の企業で働くまたはスペイン語圏の企業と取引するにあたって、日本語のネイティブであることは非常に大きな強みです。
スペイン語を習得することで、あなたは同時に「日本語」という強力な武器を掘り起こし、役立てることができます。
スペイン語で意思疎通が取れて、日本のユーザーや企業、マーケットとの架け橋になれる存在は、日本への進出を検討しているスペイン語圏の企業にも重宝されるでしょう。
多くの可能性を秘めているスペイン語の世界
今回の要点をまとめると、以下の通りです。
- スペイン語は世界で4番目に使用されている
- 多くのアメリカ人がスペイン語の需要と将来性を実感している
- アメリカ総人口の17.4%がヒスパニック系(世界2位)
- アメリカ50州中43州において、スペイン語は英語の次に使われている
- 日・米・中の政府や企業もスペイン語市場に注力している
- スペイン語への翻訳・ローカライズの需要が40%増
- 2050年までにアメリカのスペイン語人口は世界1位に
アメリカだけではなく、今や世界中に大きなインパクトを与えているスペイン語市場。
ヒスパニック市場・ラテンアメリカ市場ともに、今後スペイン語はより需要が高まっていくことが予想されています。
外国語の習得や海外進出などを考えている方は、高いポテンシャルを秘めているスペイン語の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
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日本国内で観られるスペイン語の映画やドラマには、残念ながら限りがあります。
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日本語、英語、スペイン語、フランス語のマルチリンガル。2006年から海外との往復を繰り返す。Webメディア運営会社に約5年勤めたのち、フリーランスとして独立。【経済・ビジネスライター】【SEOディレクター】【コピーライター】【オンラインPR】【AI prompt engineer】として働く傍ら、アメリカの大学「University of the People」でBusiness Administration(経営学)を履修中。執筆メディア:『ダイヤモンド・オンライン』『SPEEDA』『ELLEgirl』など。Yahoo!ニューストピックス、NewsPicks掲載経験あり。 グローバルに学び、働き、旅したい人に知って得する有益な情報をお届けします。