ミクロ経済学とは?初心者でも分かりやすく解説
こんにちは!マルチリンガルライターのSayah (@sayah_media)です。フリーランスとして仕事をする傍ら、アメリカの大学University of the People(UoPeople)で経営学を学んでいます。
前コースでミクロ経済学を学んでいて、本や記事を読む度に感じたのは、難しい用語が羅列されていて、初心者には分かりづらいものが多いということでした。
この記事では、先日「Microeconomics」コースを修了した私が、ミクロ経済学の定義や学ぶ内容、マクロ経済学との違いについて、分かりやすく解説していきます。
経済学の定義
「経済学」と聞くと、皆さんは一体どのようなイメージを思い浮かべますか?
お金や財政について学ぶ学問?ビジネスについて学ぶ学問?それとも数学的な学問でしょうか。
実は私もそう思っていました。しかし、大学でミクロ経済学を学ぶことによって、
経済学とは
- 個人や企業の行動やリソースが社会にどのような影響を与えるか
- 地球の環境問題に対し、どのようなソリューションとなり得るか
- 何を選択し、何を分配すれば、世界中が幸せになれるのか
など、グローバルな視点を持って、あらゆる可能性や選択肢について分析し、世界の様々な問題について考える、非常に興味深い学問であることが分かりました。
また、経済学は「人々の行動に着目する」という社会的な部分と、人々の選択において「可能な限り科学的に分析する」という科学的な部分を持つ学問です。
経済学者のRittenberg & Tregarthenは、経済学について、「経済学とは、利用可能な選択肢の中から、人々がどのように選択するかを研究する社会科学である」と説明しています。
Source: Rittenberg, L. and Tregarthen, T. (2012). Macroeconomics Principles V. 2.0.
人間にとって必要な商品やサービスを生産するには、モノだけではなく労働力や時間など、様々なリソースが必要です。
しかし、残念ながら、私たちの世界では、それらの供給量に限りがあります。
例えば、予期せぬコロナウイルスの発生によって、世界中で食品やマスク、トイレットペーパー、買い占めが起こり、商品の不足(Shortage)が深刻化したことは、記憶に新しいのではないでしょうか。
これは供給量(Supply quantity)よりも需要量(Demand quantity)が高まったことにより、超過需要(Excess demand)が起こっている状態です。また、超過需要(=品不足)になると、価格が上昇します。
さらに、消費者と生産者の両者が満足しており、バランスが取れている理想の量を、経済学では均衡取引量(Equilibrium quantity)と呼びます。
また、経済学において、キーとなるコンセプトは
- 希少性(Scarcity)
- 選択(Choice)
- 機会費用(Opportunity Cost)
の3つです。
Source: Rittenberg, L. and Tregarthen, T. (2012). Macroeconomics Principles V. 2.0.
このように、経済学とは、人々や企業(個人、家庭、ビジネス、社会など)がScarcity(希少性)に直面した際に、
- どのような行動や意思決定をするのか(選択)
- それを選ぶことで何を諦めることになるのか(機会費用)
- 希少な財をどのように分配すれば公平になるのか(希少性)
などについて、分析する理論です。
Source: Greenlaw, S. A. & Shapiro, D. (2018). Principles of microeconomics, 2e. Open Stax Rice University.
他にも、
- 人々がなぜ教育を必要とするのか
- なぜ少子化が起こるのか
- 汚染問題への解決策は何か
- なぜ女性がほとんどの家事を行うのか
- なぜ高齢者の公共交通機関の割引サービスが必要なのか
などの、一見関係がなさそうなトピックも、分析の対象になります。
経営学とは、正に世界を見る学問でもあると言えます。
経済学者の神取 道宏氏は、著書『ミクロ経済学の力』の中で、経済学のメインテーマは、それぞれ制定されている制度やルールの下、
- どのような結果がもたらされるか
- また、その結果が良いか悪いか
を判断することであると述べています(神取, 2019)。
出典:神取 道宏 (2016) 『ミクロ経済学の力』日本評論社
ミクロ経済学のベストセラー『ミクロ経済学の力』では、ミクロ経済学の基盤を学ぶことができます。
(左:電子辞書版 右:ペーパー版)
ミクロ経済学とは
「ミクロ経済学」とは、経済学においてあらゆる分野の基礎を成す、経済学のコアとも呼べる学問分野です。
メインテーマは、資源分配について分析し、様々な社会問題を解決することです。世界には希少な商品やサービス(経済学では「財」と呼ばれる)がたくさんあります。
ミクロ経済学では、それらをどのように分配するかを研究します。そのため、個々の経済主体(家計、企業、政府など)について充分に理解を深めることも、ミクロ経済学の重要な領域の一つです。
ミクロ経済学に関して、SMBC日興証券では、
- ミクロ経済学とは、家計(個人)や企業を最小単位とし、その行動や意思決定を分析する領域である
- ミクロ経済学とは、家計や企業など、個々の経済主体の行動に焦点を当て、市場でどのように価格決定が行われるのか、資源がどのように配分されるのかを研究する領域である
- 「価格をどの程度まで下げれば、商品が売れるようになるか」などの価格メカニズムも、ミクロ経済学の領域の一つである
と、定義しています。
筆者が先日修了した「Microeconomics」のコースでは、家計(個人)や企業の行動や意思決定にフォーカスした上で、
- 市場でどのように価格が決定されるか
- 資源がどのように家計(消費者)や企業(生産者)に分配されるか
などについて研究しました。
オススメの参考書
ここでは、ミクロ経済学を学ぶにあたって、教科書をいくつか購入した中で、最も読みやすくて分かりやすかった本をご紹介します。
①『ミクロ経済学 Expressway』
こちらは、全体的に読みやすい言葉で書かれており、ミクロ経済学の入門知識を把握するのに大変役立ちました。
(左:電子辞書版 右:ペーパー版)
②『ミクロ経済学って大体こんな感じです』
こちらも著書の方の言い回しが大変面白くて、ユーモア交えて解説してくれているため、難しい経済学でも大変読みやすかったです。
(左:電子辞書版 右:ペーパー版)
どちらもミクロ経済学の第一歩として、基礎知識や全体像を把握するのに大変オススメです。
ミクロ経済学とマクロ経済学の違い
「Economics(経済学)」には、大きく分けて「Microeconomics(ミクロ経済学)」と「Macroeconomics(マクロ経済学)」の2つの分野があります。
Source: Difference between microeconomics and macroeconomics | Economics Help
ミクロ経済学では、消費者(家計)や生産者(企業)の行動に注目し、商品やサービスの需要や供給、政府の価格決定など、それぞれの経済主体を個々に分析していきます。
それに対し、マクロ経済学とは、国全体の経済動向や、他国の貿易など、大規模な市場(経済主体)を一つにまとめて分析する領域です。
ミクロ経済学とマクロ経済学の比較表
比較表 | ミクロ経済学 | マクロ経済学 |
経済主体 |
「家計」「企業」 |
市場の |
研究内容 |
モノやサービスの |
国全体の経済成長や |
分析方法 |
財 |
インフレ、利子率、 |
ミクロ経済学では、個人の市場自体に目を向けるのに対し、マクロ経済学では、主要な経済的総計の動き、つまり総生産量のレベル、雇用レベル、価格レベルについて説明することを目的としています。
Source: Rittenberg, L. and Tregarthen, T. (2012). Macroeconomics Principles V. 2.0.
つまり、
- ミクロ的な(狭い)視点で分析を行うのがミクロ経済学
- 国単位などのマクロ的な(広い)視点から分析を行うのがマクロ経済学
となります。
また、「ミクロ的な見方をするか」「マクロ的な見方をするか」で、同じモノでも意味が変わるというのも大きなポイントです。
最後に
一見難しそうに見えるミクロ経済学。しかし、理解できると非常に興味深い内容で、考え方に共感することも多く、私自身も想像以上に楽しく学ベています。
私自身も最初は経済学に対して、「お金の稼ぎ方」や「株や景気などのお金の動き」を分析する学問というイメージを持っていました(それらも経済学の重要なトピックですが)。
しかし、経済学とは「幸せのあり方を解明する学問」と言っても過言ではありません。
そのため、経済学の本質を少しでも伝えられたらと思い、この記事を執筆しました。本稿が、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
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